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『グリード』

 真山仁氏の最新作『グリード』(講談社)を読んだ。真山氏の代表作『ハゲタカ』シリーズの第4弾。リーマン・ショック直前の米国を舞台に、主人公・鷲津政彦が米国企業の買収を目論むストーリーだ。

 バブル崩壊以降、日本企業の買収という設定から、今度は米国企業を相手に展開していく。日本企業買収の際、鷲津は“バナナ野郎”と揶揄され、日本人から嫌われる存在だった。見た目は黄色いが、一皮剥けば白人が出てくるという意味だ。ところが、米国では米国の象徴を狙う野蛮なジャップとして敵対視される。そのようななか、鷲津が「日本人として」どう振る舞い、どう仕掛けていくのか。それが今回の見所になっている。

 シリーズに底通していると感じるのは、「無自覚の甘えへの怒り」だ。調子のいいときは居丈高に振る舞い、窮地に陥ると助けを求める。それも自分のプライドは守った形で守れという“資本家の姿”だ。会社にぶら下がっている従業員たちも、平穏なときは組合を通じて要求ばかり振りかざすが、いざ会社が買収されるとなると、守ろうと躍起になる。皆、甘えの構造のなかに身を委ねていることが浮き彫りになる。

 もっと自覚しろ、もっと自立しろ、もっと覚悟しろーー。鷲津の目を通じて、真山氏の思いがいつも伝わってくるようだ。



 ぼくは、いわゆるエンタテイメント系の小説を読み始めて10年余でしかない。それまでは長くノンフィクションばかりを読み漁ってきた。しかし、事実の断片を抉るノンフィクションから、フィクションを読むようになった。最初は、気分転換が主な目的だったかもしれない。けれど、いろいろな作品を読むうち、問題の本質を掘り下げる小説の奥深さにすっかり魅了された。

 そんなぼくが好きな作家のなかでも、真山氏はダントツにお気に入りだ。リアルでいて、それぞれのキャラクターも魅力的。しかも、常に問題の本質を抉る力強さとそのメッセージ性の高さに共感してしまうのだ。ノンフィクションでしかできない表現は否定しない。だけど、フィクションだからこその自由な表現手法と事象を浮かび上がらせる作家の力量に、大いに興奮し、改めて読書の喜びを知った気がする。

 いろんな本が数多あるけど、この『グリード』はホント、オススメ。ハゲタカシリーズを読んでいない人はぜひ、1作目も読んでほしい。

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プロフィール

Atsutoshi Yamada

Author:Atsutoshi Yamada
山田厚俊(やまだ・あつとし)
1961(昭和36)年栃木県生まれ。
週刊誌やビジネス誌、サブカル誌などで活動中。詳しくは右のリンクへ(プロフィール詳細)。

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