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都受動喫煙防止対策検討会


「このまとめに誰もが満足していません。対立が先鋭な場において、唯一できることは“不満足”を均衡させることしかない」

 5月29日、東京都受動喫煙防止対策検討会が開かれ、「2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、対策を一層強化する必要がある」とする提言をまとめた。14年10月からスタートした同検討会は、年度末の今年3月、提言をまとめるはずだったが、条例違反に罰則を設けて都内全域に全面禁煙の網掛けを主張する医師ら“禁煙派”と、中小零細の飲食店経営者などを擁護し、そもそもたばこの害を疑問視する“分煙派”の対立は根深く、対立した意見の着地点が見い出せないまま、異例の“延長戦”でこの日を迎えた。

 その7カ月間の議論の舵取りを担ってきたのが、安念潤司・中大大学院法務研究家教授で、冒頭の言葉は議論をまとめる最終段階で述べた一言だ。

 この日、「きょう、出席している委員の総意でいいのではないか。もう辞退してしまった人、欠席した人などの声まで入れる必要はない」(野田哲生委員・がん研究所所長)や「委員の選定辞退間違いだった。次は選定そのものを考えてほしい」(工藤翔二委員・結核予防会理事長)、「財政支援は必要ない。禁煙すればいいだけのこと」(大井田隆委員・日大医学部公衆衛生学分野教授)といった極端な意見が飛び交った。

 というのも、名取春彦委員(獨協医科大学病院放射線科医師)は3月31日の任期で委員を辞退、奥村康委員(順天堂大大学院医学研究科アトピー疾患研究センター長)も“予告通り”欠席。“分煙派”“中立派”と見られる委員は、細野助博委員(中大総合政策学部大学院公共政策研究科教授)だけだったからだ。

 元々、検討会のメンバーは「全面禁煙を推進する“禁煙派”が5人、慎重を期す必要があるという“中立派”が4人、分煙が好ましい“分煙派”が3人」(都庁関係者)とされていた。団体ヒアリングで禁煙推進を求める声が出れば、“禁煙派”が賛意を示し、分煙を求める意見には厳しい追及が垣間見られた。

 “禁煙派”の強気の背景には、国際オリンピック委員会(IOC)が88年に禁煙方針を採択したことなどが挙げられる。92年のバルセロナ以降の夏季五輪開催国は、すべて罰則付の受動喫煙を防止する法律や条例を整備している。また、世界保健機構(WHO)が起草したたばこ規制枠組条約に日本が批准していることも大きい。

 一方、中小・零細業者が多い飲食業や宿泊業者の間には、一律禁煙の網掛けに不安を隠さなかった。

 そんななか、安念座長が当初まとめた提言案は、「18年までに国の動向やガイドラインに基づく対策の効果を踏まえ、条例化を見据えて再検討する」というものだった。それに“禁煙派”からは反発の声が出た。要は、「全面禁煙が多数なのだから、そちらを尊重すべき」というものだった。

 安念座長はじめ、村千鶴子委員(東京経済大現代法学部教授)ら法律家は、憲法を上回る罰則付きの条例制定は無理があるとして説明したが、“禁煙派”の医師らは猛反発。挙句の果てに、「事務局(都)の委員の選定ミス」との言い分は、自分の正義だけを貫くためには相手を詰っても面罵しても平気な時の首相を思い浮かべてしまう。足して2で割れない議論が続く中で、常に冷静に、時にユーモアも交えて仕切った安念座長の“大岡裁き”は見事だった。

 受動喫煙防止対策の議論は、どこでも教条主義的な者の対立で、吐き気を催すような議論が展開される。ウラ側にさまざまな思惑があると考えれば、余計気味悪い。それは、単純にたばこ産業に関わる者だけというわけではない。よく考えれば、利権はどちらの側にあるのか、明らかだからだ。

 そのような中、玉虫色と揶揄されながらも粘り強く提言をまとめた安念座長には敬意を表したい。一時期、ある団体から誹謗中傷のビラがマスコミに投げられ、かなり不快な思いをしたであろうし、心身ともに疲弊したことは想像に難くない。

 まずは憲法があり、法律がある。そして、地域ごとで条例などがある。憲法を逸脱するような条例ができること自体、法治国家としておかしいことで、本来は国がどのようなスタンスで臨むのか、その議論こそが王道であるはずことだ。今回、安念座長をはじめとした法律家の意見をもっと尊重して、「大人の議論」が展開されることを望んでやまない。


都受動喫煙検討会

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プロフィール

Atsutoshi Yamada

Author:Atsutoshi Yamada
山田厚俊(やまだ・あつとし)
1961(昭和36)年栃木県生まれ。
週刊誌やビジネス誌、サブカル誌などで活動中。詳しくは右のリンクへ(プロフィール詳細)。

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