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約束

 きょう、一人の男を見送った。春なのにちょっと寒い日曜の昼、お前はこっちの気持ちも知らずに気持ちよさそうに寝ているようだった。

 大須賀友一。イラストレーター、デザイナーとして『サンデー毎日』ではなくてはならない存在だった。サンデーを読んだことのない人でも、毎日新聞を読んでいた人は、彼の法廷画を知らず知らずのうちに目にしていたに違いない。

 おれは何度も困ったとき、お前のイラストに助けられた。それだけじゃない。お前がいただけで何度も助けられた。原稿に煮詰まって、喫煙所に何度も足を運んだ。そのとき、お前は仕事があるのに、おれに付き合ってくれた。おれはマイルドセブンスーパーライト、お前はハイライト。たばこを吸いながら、文庫本を読んでる姿はちょっと渋かったよ。仕事で自分がしんどくても、いつもおれを気遣って笑顔を振りまいてくれていた。

 仕事を2日も無断欠勤して、会社の方が自宅を訪ねたら、布団の上で静かに眠っていたというじゃないか。聞いたとき、信じられなかった。冗談だろ、嘘だろ、ふざけんなよ。おれより若いくせに勝手に一人でいっちゃうなんて、ズルいだろ。そう思わないか? お前さ、「でへへ、ごめんなさい、嘘でした」って起きてヘラヘラしてみろよ。いまなら許すよ、だから、だからもう一度笑ってくれよ。

 多くの人がお別れに集まった。遠い空から見たかい? お前のことを慕って、こんなに多くの人が集まってくれたんだ。ちょっぴり羨ましいや。自慢してもいいよ。「山田さん、すごいでしょ?」って。おれ、正直言うよ、「悔しいけど、カッコいい」って。でもさ、おれはお前がいなくなっちまったことのほうが、すっげぇ悔しい。そして、悲しい。

 でもさ、おれは生きるよ。かっこ悪くたって、お前の分まで生きてやる。そうだろ? お前はきっとそう言うんじゃないか。正直言うとおれはさ、東日本大震災で想像を絶する被害を直視できないところがあった。死者・行方不明者2万7639人(4月3日現在)って、数字で表せるものじゃないのにね。一人一人の命に、多くの人の思いが込められている。分かっていたけど、知らず知らずのうちに目をそらしていたのかもしれない。おれの仕事は目をそらしちゃいけないんだよな。約束するよ。受け止める強さはないかもしれないけど、転んでも泣いても逃げずに生きるって。じゃあね、大須賀。安らかに眠ってくれ。合掌。

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No title

はじめまして。
大須賀さんとは久しくお会いしておりませんでした。
あの日、世田谷にかけつけられず、最後のお別れができなかった者です。
山田さんの文章を読むことができてよかったです。
ありがとうございます。
私も生きます。
プロフィール

Atsutoshi Yamada

Author:Atsutoshi Yamada
山田厚俊(やまだ・あつとし)
1961(昭和36)年栃木県生まれ。
週刊誌やビジネス誌、サブカル誌などで活動中。詳しくは右のリンクへ(プロフィール詳細)。

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